自分勝手な記念日
今日が記念日、といえばきっと彼は「性格診断通りドライだね」というだろう。
人は出会いと別れを繰り返す。
刹那のものもあればずっと続く地平線のような付き合いもある。
どっちがいいかと言われれば、きっとほとんどの人が後者を選ぶ。
私だって後者でありたい。
だけど、出来なかった。
自分だってわからない。
なぜこんなにも一人の人間を愛し抜くことができないのか。
冷酷だからだ、飽き性だからだ、と言ってしまえばそれで終わることなのかもしれない。
だけど、認めたくない。誰かをできるだけ沢山に、無条件に、受け入れられるようなそんな器量を持ち合わせていたい。そんな器を持ち合わせられたら、と思う。
「言ってくれてありがとう。最初は気まずいかもだけどできるだけ普通に接してね。」
それに返事もろくにできない自分は優しくないのだろうか。スタンプ一つくらい返せばよかったのだろうか。
最もらしい理由をつけて、相手のせいにして終わりを告げた方が良かったのだろうか。
いつも終わり方はわからない。
たしか、最初は自分が「あ、この人いいな」と思っていた。顔なのか雰囲気なのか声なのかは覚えていない。だけど、素敵だと感じたのだ。それに間違いは一つもない。
友達に告げて、連絡を催促され、自分の気持ちを自分で高めていった。まともに喋ったことすらないくせに。ありもしない幻想を相手に勝手に抱き、勝手にレッテルを貼り、デートの度に次は告白なのだろうか。どうやってOKしよう。出来るだけ可愛い言い方で。と、可愛い反応の仕方を検索にかけたりもした。
だけど、いざ付き合ってみたら想像を裏切られたと自分を悲劇のヒロインにし、勝手に別れを告げた。
それも、「相手が自分勝手だったから」という理由で。
自分の夢のために就職先を蹴り、自分で決断したことに落ち込んで酔い潰れるまで飲んで、話を聞いてほしいと私に電話をし、私の時間なんて気にもせず彼は壮大な夢を語った。
違和感だった。
彼が落ち込んでいても可哀想だと少しも思わなかった。むしろ、雇ってくれた方のリスクを全く考えていない責任感のないやつだとも思った。私に対してもそう。用事があるから電話は最寄り駅から家に着くまでの時間でと伝えていたのにも関わらず家に着いたと言っても話し続ける。それも彼の気持ちが堂々巡りしているかのように同じ話をずっと。
「しんどい」と思った。
そして。
彼の将来に私がいた。それが1番の違和感だった。
違う。私はこの人と結婚したいわけじゃない。この人の夢を応援したいわけじゃない。私の描く将来に彼は、いない。
飛んだ自分勝手さだ。
思い返せば彼は承認欲求が強いだけで何一つ悪いことなんてしていない。私のことをちゃんと好きでいてくれていて、返信をまともに返さない私に文句一つも言わなかった。たとえ心の中で思っていたとしても。
ただ、話が長く自分語りが好きだっただけだ。
それに付き合いきれなかったのだ。
誰だ。本当に自分勝手なのは。
でも、後悔はない。
他人に戻るだけ。
きっと普通に接することもできない。
それが私なんだ。
それが、わかった日だった。